DX初心者と上級者が助け合う相互扶助の輪、広がれ!――福岡市DX推進ラボ

2024/04/09(火)

福岡市の外郭団体で、九州地域におけるシステム情報技術やナノテクノロジーなどの先端科学技術に関わる産業の振興を担う公益財団法人九州先端科学技術研究所(ISIT)が事務局の「福岡市DX推進ラボ」。2016年度に地方版IoT推進ラボとして活動開始し、2023年度からは現在の地域DX推進ラボとして活動。活動の一つとして『DX推進「実行力」の勉強会』を月1回、年間合計で12回開催してきました。そこでは「コミュニティ内のメンバーが相互に教え合う(相互扶助の)環境」――DXで悩んでいる人を仲間で助けて、それで助けてもらって成長した人が今度は教える立場に……という良いサイクルが生まれることを目指しています。

福岡市DX推進ラボは、AIやIoT活用を推進するDXコミュニティである「福岡DXコミュニティ」と、地域DX促進事業「One Kyushu DX」という、もともとはそれぞれ違う経緯から立ち上がったものの、目的を同じくしていたDXコミュニティをISITが取りまとめる形でスタートしました。

当初、オンラインでのコミュニケーションを主体にしようと立ち上がりましたが、後に新型コロナウイルスが5類感染症に引き下げられたこともあってか、コミュニティのメンバーから現地での交流やイベントへの要望が増えてきたそう。そして、今では現地イベントを中心に盛り上がっています。

無料参加できる同ラボのコミュニティには、一企業の経営者や、普段は会社勤めで個人的に参加しているという人、学生など、さまざまな立場の人が参加しています。参加者の皆さんがかかわる業種はさまざまですが、特に製造業関係が目立つとのこと。日頃の業務でDXを検討していたり、推進に悩んだりしている人が、情報や知識を求め、このコミュニティにやってきています。その中には、ITシステムを使う人、それを開発する人といて、ITのスキルやDXの知識は詳しい人から初心者まで、それぞれであるそう。勉強会では、多様性あるメンバーたちが共に助け合ってうまく成長できるよう、さまざまな工夫をしています。

皆が「参加したい!」と思える仕組みづくり

福岡市DX推進ラボでは、運営メンバーの時間や人員が有限である中、コンスタントに勉強会を開催し、継続して人を集めていくための企画をどうするかが課題であったそうです。初年度の勉強会開催については、コミュニティーメンバーに相談したところ、その一員であった株式会社ゼロイチハッカー 代表取締役社長の石垣尚紀氏が講師として名乗り出てくださり『DX推進「実行力」の勉強会』を実現。

テーマは同氏からの提案で、不確実性の高い状況に有効な「アジャイル開発」をベースに、ご自身の経験を加えた「アジャイル心技体」としました。
開発技術の話ではなく、エッセンスに絞ることで、営業や事務など文系職の人でも気軽に参加できる内容としました。

勉強会は19時開始と、会社での業務終了後に参加できるようにしました。前半は座学、後半はワークショップという構成で、少人数でグループを組んで課題に取り組み、知恵を出し合い、議論しながら、アジャイル開発の考え方を体験してもらうという内容になっていました。勉強会の最後には、グループ毎に検討内容のプレゼンテーションも実施し、全員で学びを共有しました。

「参加しやすくする」ための大事なポイントが、『「どの勉強会に参加しても大丈夫」な「1回で完結する勉強会」であること。』月1回開催する中で、例えば、毎月継続して参加しなければならないとなると、やはり参加のハードルが高まってしまいます。そこで、勉強会は1回で完結するようにしました。「続けて参加して理解を深める」のもよし、「復習がてら久しぶりに参加」もよし、もちろん「1回きりの参加」でもよし、というわけです。

また勉強会では少人数のグループの中に、さまざまなスキルレベルの人がいる状態にし、グループごとでスキルが偏らないようにしたことも重要なポイント。これで、自然と「分かる人が、分からない人にじっくり教える」状況になるようにしました。

さらに、参加者の大きなモチベーションとなっているのが、勉強会後の食事を楽しみながらの交流会。毎回、非常に盛り上がるということで、閉会が夜遅くになることも時々あるそう。勉強会で知識を得るということも収穫ですが、悩んだ時に助けてくれる人や、一緒に高め合える人と出合い、議論ができることも大きな収穫です。

相互扶助の輪が広がる

福岡市DX推進ラボによる活動が本格的に始まってまだ1年たっていませんが、当初目標とした相互扶助のコミュニティが早速芽吹いています。勉強会や交流会など現地で醸成されるコミュニティがベースになって、SNS「Slack」での交流が日々盛んにおこなわれています。

交流会の場で悩みや課題を打ち明け、いろいろな人からアイデアをもらって、その後、自社での業務や教育で、得られた知識を取り入れて役立てている人もいます。アジャイルは、ソフトウェア開発の現場でよく聞かれる手法であり、勉強会でもそれがメインになっていましたが、製造業の参加者の方が、「メカ系でも同じ考え方が使える」と気が付いて、早速自社の業務で生かしていたそうです。

さらに大きな成果の1つが、福岡市内に本社を置くワイヤーハーネス・各種FA装置・医療機器等の総合メーカーの株式会社オートシステムに、「オートシステムカレッジ(ASC)」ができたこと。社内のDX人材育成で悩んでいたことから勉強会に参加した、オートシステムに勤める熊本氏が中心となり立ち上げた「社内大学」です。こちらではノーコード開発ツールを活用したDX人材を育成することを目的にしています。勉強会で得た知識や、コミュニティの仲間からのアドバイスが存分に生かされています。
 

このように、相互扶助のコミュニティは、その外に種が運ばれ、そこでも芽吹いたというわけです。オートシステムでは「note」を使ってこの取り組みの発信をしているので、さらにそれを見たほかの企業によって相互扶助の輪が広がっていくことにも期待できます。
 

別テーマでこれからも

早くも1年目で、まさしく「いい感じ」に成果が出たといえる、この取り組みは、引き続き継続しつつ、今年度は1つだけのテーマであったところ、次年度はテーマを3つにしようと企画中。

ただし回数は無理して増やさず、3テーマで年12回としていくとのこと。検討中のテーマの1つが、「データドリブン」であるということです。データを収集できる仕組みができても、やはり集めたデータを活用できないことにはDXは始まりません。DXの現場では、データ活用の段階で悩んでいるケースも実際に多いです。テーマ選定も、さすがの目の付けどころです。 

 

 


福岡市DX推進ラボ

福岡市DX推進ラボは、「地域企業同士でDXを支援し合うエコシステムを創る!」をテーマとし、相互扶助のコミュニティとして会員間の共創の場を提供して、地域全体でのDX推進に貢献していくことを目的に活動しています。AIやIoT活用を推進するDXコミュニティである「福岡DXコミュニティ」と、地域DX促進事業「One Kyushu DX」を、公益財団法人九州先端科学技術研究所が取りまとめています。

問い合わせ先
福岡市DX推進ラボ 事務局
公益財団法人九州先端科学技術研究所
〒814-0001 福岡市早良区百道浜2-1-22-5F
E-mail:okdx-team@isit.or.jp
 

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